
龍穴神社
女人禁制だった高野山に対し、女性の参拝も許されてきたことから女人高野(にょにんこうや)と呼ばれてきた室生寺。静かな空間に塔や諸堂が美しく配置され、数々の素晴らしい仏像も安置されている。
室生寺の最寄駅である近鉄室生口大野駅からバスで血原橋行きに乗り、龍穴神社を目指す。15分ほどで龍穴神社のバス停に着く。龍穴神社は幹線道路から一歩入っただけなのに、静寂。この龍穴神社と室生寺は「鎮守社と神宮寺」の関係とのこと。天応元年(781)より続き、杉の大木がその歴史を語っている。

龍穴
境内にある地図によると、龍穴は山の中にある。前の道をさらに500mほど南下し、東の方向へ山に上がっていく道を見つける。看板も何もないが信じて登っていく。舗装された一本道。曲がりくねって目的地が見えない不安にかられる。800mほど来ただろうか、やがて右手に白い鳥居が見えて安堵する。目指す龍穴はさらに200m進んだところにあった。階段を下りていくと川のせせらぎが聞こえ、湿った空気が流れる。やがて茶褐色の鱗を光らせた龍が目の前に。
大きな一枚岩の上に流れる川が、一本の太い線のようにはしり、岩の茶色をはっきり目立たせている。ところどころに生える藻が、鱗のように見える。川の横に天然にできた洞窟が龍穴。まるで龍がそこから出てきたようだ。岩盤が長い年月をかけてこのような形になったのかと思うと不思議でならない。
毎年10月15日の秋祭りは、獅子舞が奉納され、この静かな神社もにぎわうそうだ。
近くの室生寺の参道に立ち並ぶお土産物屋の間に「花の里」看板。そばにある花屋さんに教えてもらった通り、コンクリートの急坂を5分歩く。無人の小さな花畑。バラ、ショウブ、シャクヤク、季節の花を近くで観察し、ベンチで休息をとる。涼しい風が川面から吹いている。
太宰治の小説「ア、秋」に「秋ハ夏ト同時ニヤッテ来ル。と書いてある。夏の中に、秋がこっそり隠れて、もはや来ているのであるが、人は、炎熱にだまされて、それを見破ることが出来ぬ。」という一文がある。龍穴神社周辺は、灼熱の日差しの中にあって一足早い秋の訪れを感じさせてくれるスポットといえるだろう。
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