
新鮮な素材を絶妙に味付け
最近、何かモノを書いていて「温」という字を使う、選ぶことが増えたな、と思う。報道で、そして身近なところでの見聞で知る人々の絆、献身やさりげない気づかい。それに自分自身が、東北の言葉で言えば「温(ぬく)ためて」もらっているからかもしれない。
全国でもそうだったろうし、東北でも「温」の情景に欠かせないのが漬物だった。多くは地元の野菜を家で漬け、お茶と一緒に来客に勧める。食卓の常連でもあり、人々の和やかなひとときの優れた脇役であり続けてきた。

専務の清野浩一さん
そのような漬物の原点を実感させてくれるのが、山形県のほぼ中央部、寒河江(さがえ)市にある「手づくりや清野工房」だ。ここで専務の清野浩一さん(32)に、父で社長の道雄さん(60)、母のあや子さん(55)のことを語っていただこう。
「父は家具屋をやりながら、木工に取り組んできました。そのお客さまや近所の方などが家にいらっしゃると、母が自分でつくった漬物でもてなす。それがごく当たり前のわが家の姿です」。
後で紹介する道雄さんの木工に加え、あや子さんの漬物を商品化したのは昨年。寒河江の友達が栽培した大根など地元産の野菜を主に使い、家族で漬け込む。保存料、着色料は使わない。
こうして昨年、お茶の間から全国へとデビューした同社の漬物は、素材の新鮮さ、うま味も伝わり、歯応えもいい。「脱漬物世代」と思われがちな若い世代にも好評だ。漬物を食べ続けてきた祖先の遺伝子が、しっかり受け継がれているんでしょうな。あや子さんの、素材と対話しての微妙な味付け、カンを生かした漬け込みなどが家庭の「普通の味」を、山形名産の「青菜漬」、「おみ漬」(近江商人に由来するとの説も)や各種の大根漬など多彩なメニューにも発展させる。今の季節は、10種類以上の野菜、山菜が豊かな食感のハーモニーを響かせる「多菜漬」も人気だ。

モノづくりへの情熱と遊び心があふれる
そして、道雄さんの木工。幸運をもたらすという槐(えんじゅ)の木を用いたお箸(はし)と箸置きは、富士山の上に箸を置く形。箸は橋にも通じる遊び心、富士山に橋という壮大さだ。この箸は、お客さまのために、漬物などを小皿に取るときに用いる。これに加え、表札、アクセサリーのミニ下駄などもある。
「二人ともモノづくりが好きなんです」と浩一さん。東日本、そして全国各地でモノづくりに打ち込む人たちが、この国を支えてきたことを、そしてこれからも、と信じつつ、たくあんをぽりぽり食べる。あなたも、あがっしゃい!
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