
餅と豆腐が互いに主張し合う、豆腐入り雑煮
利根川上流に位置する、利根沼田地方の暮れは、正月準備に忙しかった。餅(もち)つき、雑煮や正月料理に使う野菜の下準備。飼っていたニワトリをつぶし、骨までたたいて雑煮などのダシに使うトリ肉団子を作るのも暮れのひと仕事だった。1年を通して続く豆腐作りも暮れには欠かせなかった。
みなかみ町月夜野地区に伝わる雑煮は、しょう油仕立ての汁に大根、ニンジン、サトイモ、ハクサイなど、主役の餅が隠れんばかりの具だくさん。地元の野菜などに混じって入れられるのが、自家製の豆腐だ。

雑煮に入れる豆腐は、そぎ切りされる
群馬県北部の利根沼田や吾妻の地域では広く大豆が栽培され、みそ、しょう油、豆腐、煮豆などさまざまに加工されてきた。肉や魚が容易に手に入らなかった時代、大豆は貴重なたんぱく源として重要だった。豆腐は、正月、節分、節句などの行事食にも使われた。
雑煮には豆腐をそのまま、そぎ切りにして入れた。「この地域では、さいの目切りは仏事に使う切り方。さいの目切りは嫌われた切り方で、ふだんのみそ汁も、そぎ切り」と言う。
貴重なタンパク源として、さまざまな料理に使われてきた大豆だが、子どもたちの評判は悪い。学校給食で出される雑煮は、豆腐に代わり鶏肉が入る。豆腐と餅の織り成す食感は、継承されずに確実に消えつつある。
【材料】
大根、ニンジン、サトイモ、ハクサイ、ほうれん草、ネギ、ちくわ、ナルト、豆腐、コブ、かつお節、ユズ、餅
【作り方】
1 大根・ニンジンは短冊きり、サトイモは半月切り、ハクサイはざく切り、ネギは斜め切り、ちくわ・ナルトは輪切りに。ほうれん草はあらかじめ茹でておく。
2 コブでダシを取った汁に、野菜、ちくわなどを煮込み、しょう油で味を調える。
3 豆腐はそぎ切りにし、汁に入れる。
4 焼いた餅を入れる。仕上げにほうれん草、ナルト、ユズ、かつお節を乗せる。
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