
生産者直売所で売られている佐土原ナス。味わいはとても上品
焼きナス、みそ炒め、麻婆ナス、揚げだし、煮びたし…。食欲をそそられる盛夏の野菜、ナス。スーパーに山積みされたナスは、光沢のある濃い紫色や表面のみずみずしい弾力に新鮮さを感じます。ところが最近、少々見た目の変わったナスを目にする機会が多くなりました。同じ形がほとんどなく、色も濃かったり薄かったり。宮崎県の伝統野菜のひとつ、「佐土原ナス」です。特有の上品な甘さと、トロリとした口当たりに思わず舌鼓を打つほど。種が少ないのも特長で、おいしさが直接伝わる焼きナスは特にお薦めです。
宮崎県の中央部、佐土原藩で作られていたことが名前の由来とされる「佐土原ナス」。宮崎市近郊のスーパーや生産者直売所では、販売したその日に売り切れてしまうほどの人気です。このナスは、ほとんどが卸売市場を通さず、農家から直接卸したものが店頭に並びます。形がまちまちで、変色しやすい佐土原ナスは、統一規格や外見を優先する市場を通すと半値ほどにしかならないからです。

種が少ないのも特長のひとつ。皮もはぎやすく、焼きナスにお薦め
それが今なぜ人気なのか ―。「見た目が悪くても、味が良ければ買う消費者が増えたということに尽きる」。伝統野菜に詳しい元県総合農業試験場副場長の宮崎市の富永寛さんによれば、消費者の本物志向やスローフード運動の広がりが背景にあるということでした。
「佐土原ナス」は、戦前まで佐土原町を中心に広い地域で栽培されていましたが、夏場になると温度や水、肥料の量によって濃い紫色から赤紫に変色することもあったそうです。加えて形もそろいにくいため、戦後に生産農家が激減しました。高度経済成長期は消費者が見栄えを重視する時代。その流れと共に1980年ごろには姿を消してしまいました。
復活したきっかけは、県総合農業試験場(佐土原町)の冷蔵庫に保存されていた種で、当時副場長だった富永さんが栽培を再開したことでした。今から20年ほど前、持ち込まれた約二百粒の種からできた実を食べ、そのおいしさに「何とか復活させたい」と思ったからだそうです。
富永さんから栽培を持ち掛けられた農家は「見た目が悪く、売れない」と思ったそうです。しかし、ナスを直売所に出してみると、想像を上回る反響があり、「消費者は味が“本物”であれば買うんだ」と実感できたそうです。
関係者の強い思いや取り組みで復活した「佐土原ナス」。味に関しては折り紙つきです。「嫁に食わすな」とは言いますが、まだまだ暑い折、今夜の食卓にでも並べてみましょうか。







