
数々の物語の舞台になった「あの」踏切。湘南の代名詞としてよく知られています。
ホーム前面すべてが海という湘南の名物駅、江ノ島電鉄「鎌倉高校前」駅から程近い踏切。日坂(にっさか)踏切というのですが、この写真でピンと来る方は、きっと私と同じ世代ではないでしょうか。きっと「あきらめたら試合終了だよ」だとか「俺たちは強い!」などの名言に、おもわず涙腺が緩んでしまう方ではないでしょうか。
こここそが、私を含め多くのにわかバスケ部員を生み出し、多くのファンを熱狂させた「SLAM DUNK」のアニメ版オープニングで、主人公の花道と晴子が江ノ電を挟んで向かい合う、あの踏切なのです!(まぁ私は中学バスケ部時代の3年間、名言を吐くことなく引退しましたが…)

江ノ島電鉄。鎌倉・藤沢間をおよそ35分かけてゆっくり辿ります。
神奈川県は高校数の多さと全国大会への出場枠の少なさから、非常にレベルの高い地区予選が繰り広げられることが多く、多くのスポーツマンガの舞台やモチーフになっています。「MAJOR」「I’ll」「DEAR BOYS」「甲子園へ行こう」そして「ドカベン」。皆さんもどれかひとつくらい、読んだことがあるのではないでしょうか。ネット上では「あの○○高校は絶対にあそこだ」など、モチーフ探しが行われるほどです。
その中でも江ノ電沿線は、その景色のよさと、都内からの利便性もあって、多くの作品で舞台になっています。私が写真を撮りに行った日も、練馬ナンバーのロケバスが何台か来ていました。
実はこの江ノ島電鉄、今年、全線開通100周年を迎えたのですが、心あたたまるエピソードがあります。さかのぼること12年前、1998年の秋、「難病の少年の夢をかなえてやって欲しい」と江ノ電に手紙が届きます。その少年は「江ノ電の運転士になりたい」という夢を持ちながら、心臓の病気に蝕まれ、容態は日に日に悪化するばかりでした。

辞令交付のニュース(神奈川新聞2008年12月23日付1面)
江ノ電は全社をあげて実現に向け動き出します。なにしろ運転資格のない、しかも16歳の少年を運転台に入れるという前代未聞の試み。担当官庁を説き、併走する国道134号線には救急車が随行。そして江ノ電開業108年の歴史の中ではじめて、無人駅を含むすべての駅に駅員が配置され、少年は点滴付の車椅子姿ながら、制服を着て運転士の横に同乗、藤沢駅から全線を走りました。その後、検車区での運転を体験した後病院に戻った少年は、4日後に息を引き取りました。
それから10年後、江ノ電のジオラマを制作した少年の父親の知人が、江ノ島駅にジオラマを寄贈したことをきっかけに、社長が「ぜひ夢の続きを」と、すでに故人となった少年に対し、一般の運転士に授与されるものと全く同じ辞令を交付。そこには確かに、「乗務区 運転士を命ずる」と書いてありました…。
江ノ電に乗って、併走区間で車や人とぶつからないよう身を乗り出している車掌さんを見るたびに、この話を方々に言いふらしたくなる衝動に駆られてしまうのです(笑)。この拙い文章で私と同じ気持ちになってくださった方は、ぜひとも言いふらしてください。そして江ノ電に乗りに来てください。JRならわずか4分の区間ですが、旧きよき電車の風情と、湘南の海を感じることができますよ!
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