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6月“ヒヤッとスポット”紹介。

雨の夜の招かれざる客

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広い道だが雨が降ると…

日本を代表する霊峰・富士。その北側の裾野に広がる原生林に覆われた樹海は、有史以来長い間、人の侵入を拒み続けてきた。この青木ヶ原樹海が一躍全国に知られるようになったきっかけは、1959年に発表された松本清張の長編小説「波の塔」だと言われている。主人公の相手の女性が自殺する場所として選んだのが青木ヶ原樹海だった。

以来、この樹海は「自殺の名所」というありがたくない飾り言葉を付けて呼ばれることが定着してしまい、山梨県が人口比での年間自殺者数全国一位という不名誉を担う最大の要因となっている。県外の自殺志願者からは命を終える場所に選ばれることが多いものの、山梨県民が自殺することはほとんどない「樹海」。昼でも暗いそこは、磁石も利かず、一度迷ってしまうと二度と出て来られない暗黒の迷宮として、地元の人たちも普段は立ち入らない場所になっている。

そういう場所だけに、樹海の周辺には怪奇談や怪現象にまつわる伝承は少なくない。今日は、全国屈指の観光地・富士北麓をこれからのシーズンに訪れようという人たちのために、これだけは絶対に守ってほしいことをひとつだけ紹介したい。特に、雨の夜には…。

◇       ◇      ◇

どこまで続く森

東京方面から中央道を河口湖で下り、国道139号を静岡方面に走る。鳴沢村から富士河口湖町(かつてオウム真理教で一躍有名になった旧上九一色村。河口湖町と合併)に入るあたりは、まさに樹海の中を道路が走っている。直線道路が終わる地点は「西湖入口」の標識が立ち、右に曲がると西湖畔に出る。初夏というには肌寒いある日の夜、ここを反対方向から河口湖に向かって通りかかったタクシーが、傘も差さず道路端に立つレインコート姿の女性を発見した。好奇心も手伝って車を停めた運転手は「どちらまで?帰りだから安くするよ」と長い髪の女に声を掛けた。女は黙って車に乗り込むと「河口湖駅まで」と小さな声で言った。

太古の原生林に迷い込んだ気分になる

ルームライトの灯りで、女がまだ20代後半くらいと知った運転手は、少し浮かれた気分で色々話しかけたが、女は応えることはなかった。運転手は時々ルームミラーに写る女の整った顔を窺いながらも、視界の利かない雨の夜道を注意しながら車を走らせた。

女を乗せて10分ほど走ったころだったろうか。運転手がルームミラーを見ると、女が視界から消えていた。運転手は、長時間雨にうたれた女が具合が悪くなって、シートに倒れ込んだのだと思い、慌てて車を道路の端に寄せて停めた。そして体ごと後部座席をのぞき込んだが-そこに女の姿はなかった。運転手は夢でもみたのかとキツネにつままれたような気がしたが、ふと見ると、女が座っていたはずの後部座席のシートは、びっしょり濡れていた-。運転手の背中を、冷たいものが走った。

◇       ◇      ◇

ここを雨の夜に走ることになったら、きれいな若い女を見かけても絶対に車を停めてはいけません。


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