
納棺のシーンなどが撮影された部屋
米アカデミー賞外国語映画賞に輝き、生と死について考え、泣き笑うひとときを国境を超え、国内外の人々にもたらした「おくりびと」。山形県が物語の主要な舞台となり、そのロケ地やスクリーンに登場した風景、そしてエキストラなどで参加した県民が示した、温かでおもしろい気風にふれようと多くの人々が今も来県している。「おくりびと」の世界にひたろうとする旅人が訪れる、酒田市と上山市を紹介してみよう。

主人公の勤務する葬祭社の事務所として使われた建物
映画で主人公が勤務する葬儀社「NKエージェント」の撮影が行われた旧割烹小幡。日本海に面した港町で、北前船による上方との物流拠点として本間家や三十六人衆など豪商が活躍した酒田市の、海を一望できる日和山(ひよりやま)公園のすぐ近くにある。「人をおくる」ことの意味を語り合ったり、納棺のシーンが撮影された部屋などが公開されている。
昨年4月10日のオープン以来、今年3月末までの入場者は12万人近くにまで達した。ほぼ全国からファンが訪れているほか、「おくりびと」の山形県ロケ地巡りがツアー商品になっている台湾など各国からの観光客の姿も目立つ。ここでは館内3カ所で、その場所で撮影された映像を流し、映画と実物を見比べることもできる。
県外から訪れた人たちは、映画のシーンを思い出し、日和山公園や酒田の街を散策し、そこに古き良き日本の面影を感じ、ほっとする。市内にはそのような日本を撮影し続けた、同市出身の写真家・土門拳の作品を集めた「土門拳記念館」もある。「おくりびと」関連の問い合わせは酒田ロケーションボックス=0234-23-2446。

県内約100か所の候補から、監督がひと目で決めたという主人公の実家
一方、チェロ奏者である主人公が、所属していた東京のオーケストラの解散のため山形県に帰郷し、妻と暮らす場面で使われたのが上山市の一軒家。歌人斎藤茂吉の故郷、そして名湯・上山温泉や蔵王観光の玄関口としても知られる同市。映画で、この家や蔵王の雄大な景色、そして主人公夫婦の語らいの場面が大きな役割を果たしたことで、温泉や蔵王観光の人たちを含む多くの人々が、映画の世界を追体験しようと上山市を訪れるようになった。

上山市で行われたロケの模様
一軒家は「上山コンチェルト館」と名付けられ、市民などで組織する「上山コンチェルト♪」が管理を担当して一般公開している。三角形のテーブル、チェロ、写真パネルなどで台本の世界を再現している。好評なのが「まちかどコンサート」。月末の土、日などに映画の雰囲気を味わえるようなミニコンサートを開催する。山形新幹線の「かみのやま温泉駅」で降りて、駅舎の中で開催されるコンサートがおもてなしの第一歩という設定のときもある。市民の手作り感覚のイベントなどを通じ、上山の「おくりびと」熱は、一過性のものとならない豊かさもたたえつつある。5月30日午後2時半から上山市のリナワールドで「おくりびと」の音楽の世界とワインを楽しむ「pm.サントネージュ」も開催される。コンチェルト館は火、木曜が休館。同館や30日のコンサートなどについての問い合わせは上山市役所観光課=023-672-1111、内線193。
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