
嵐山電鉄「桜のトンネル」
京都は桜に飽くことの無い街である。
独り悠然と佇む八坂神社のしだれ桜を愛でるも良し、点在する名刹の茶屋で楽しむも良し、加茂川畔の土手にシートを引いて皆で楽しむ、これもまた良し。期間も3月末から初旬のソメイヨシノに始まり、平安神宮の紅しだれ桜、そして4月の下旬に見ごろを迎える御室仁和寺のおむろ桜。ここまで楽しんでこそ“春の義理”を果たせるというもの。
ここでご紹介するのは、そんな京都にあって、日常の中に突如として現れる異世界のようなスポットである。
広隆寺のある太秦(うずまさ)や竜安寺近くを走る嵐山電鉄北野線。
4月のある1週間、宇多野駅と鳴滝駅の間にその異世界は現れる。約200m続く桜の回廊は、窓から手を伸ばせば届くほど近くあたりを包み込み、世界をピンク色に染め上げる。夜には一変して、ライトに照らされた幻想的な空間となる。車内灯が消されて、ゆっくりとそこを通過する車内にいるとき、そこが通勤や通学と地続きの空間であることを忘れさせる。
近隣には等持院、仁和寺、妙心寺など桜の名所が多々あるほか、敷地内に立派な桜を持つ旧家もあり、クリスマスに派手な電飾を施す野暮は無いが、桜の時期だけはライトアップを施し周辺を楽しませてくれる家も多い。
4月になれば桜は咲くもの。そしてすぐに散ってゆくもの。
いつもの通り道にひと時だけ現れる異世界を楽しむ、それもまた京都の桜の醍醐味である。
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